2025年 年頭所感

2025年 年頭所感 研究会からのお知らせ
2025年 年頭所感

2025年の年頭にあたり,情報学教育研究会 代表の横山成彦よりご挨拶申し上げます。

情報学教育・教育の情報化の研究成果を活かしていきましょう

2025年の年頭に当たり,謹んで新年のご挨拶を申し上げます。

2024年を振り返りますと,国外においては戦争や紛争が続き,国内においては宇宙航空研究開発機構の月探査機「SLIM」がわが国の無人探査機として初めて月面着陸に成功,「3Dホログラム」を世界で初めて採用する20年ぶりとなる新紙幣の発行など,わが国の技術力を改めて実感することのできる一年となりました。

一方,国内においてはいわゆる「闇バイト」による社会不安,国内外の政界においては政情不安を抱え,先を見通すことのできない状況が長く続いています。

情報学教育の分野においては,2024年度末で全国の多くの高等学校で共通教科情報科「情報I」および「情報II」の各科目がすべて実施されたことになります。また,まもなく実施される大学入学共通テストにおいて,はじめて「情報」が出題されます。

また,2024年12月25日には,2030年代に実施される学習指導要領の改訂に向けて,中央教育審議会に諮問されるなど,次期学習指導要領に関する動きが活発化してきました。

情報学教育研究会は,前身となる情報科教育法研究会の創設から2025年で23年を迎えます。この23年で培ってきた情報学教育の研究成果を,また,現行学習指導要領下で開始されたプログラミング的思考を育む教育,いわゆる「プログラミング教育」,ならびに「情報I」および「情報II」の実践を通した検証から,情報学教育として次代の教育に活かすことができるように,社会に還元できるよう努めて参ります。

併せて,いわゆる「闇バイト」などの問題から,情報学教育,特に,情報モラル教育,メディア教育,情報安全教育分野の充実,展開を,学校教育に限らず,生涯学習全般を通して喫緊に取り組まなければならない社会課題であると考えます。これらの実現に向けて,邁進して参ります。

教育の情報化の分野においては,多くの学校のコンピューター教室で採用されているオペレーティングシステム(OS)「Microsoft Windows」のうち,「Windows 10」のサポート期間が2025年10月14日で終了となります。

また,統合オフィス「Microsoft Office 2016」および「Microsoft Office 2019」についても,同日でサポート期間が終了となります。また,「Microsoft Office 2021」については,2026年10月13日にサポート期間が終了となるなど,多くのソフトウェアでサポート終了ラッシュを迎えることとなります。

サポートが切れたOSやソフトウェアを使い続けると,未知のセキュリティホールなどの脆弱性に対する対処がされないため,サイバー攻撃をはじめとするセキュリティリスクを抱えることになります。

すでに教育機関においても,ランサムウェアによる個人情報流出の被害が報告されていることから,セキュリティリスクの増大を避けるため,上記のOSやソフトウェアを採用しているコンピューター教室は,早期にリプレース計画を立てなければなりません。そして,その対象となるコンピューター教室は,現在,全国で稼働しているコンピューター教室のほとんどに影響することとなります。

さらに,このサポート期限の問題は,今後のリプレース計画にも大きな影響をもたらします。

例えば,「Microsoft Office 2021」の発売は2021年10月であったことから,丸5年でサポート終了を迎えることになります。実際には,他のソフトウェアとの互換性や動作保証の検証にも時間がかかることから,発売されてすぐのソフトウェアがコンピューター教室の構築に採用されることはほとんどありません。

コンピューター教室のリプレース間隔は,5〜7年として計画をされている場合が多いと考えます。しかし,上記の状況から,コンピューター教室のリプレース後,最長4年程度を迎えるころには,サポート終了の問題を抱えることになります。先述の「最長4年程度」は,最新の「Microsoft Office」の発売後,タイミングよくリプレースをした場合であり,最新の「Microsoft Office」の発売からリプレース年度のタイミングが遅くなればなるほど,この期間は短くなることに注意されたいと存じます。

情報学教育研究会は,この問題が全国の教育機関に与える影響が甚大であることから,各ソフトウェア事業者においては,サポート期間の再考を求めるとともに,ソフトウェア選定のあらゆる選択肢が生まれるよう,国内のソフトウェア事業者においては,世界中で利用されるMADE IN JAPANのソフトウェアが各分野で生まれることを期待します。また,オープンソースソフトウェアの諸団体においても,教育分野への積極的な参入,展開を期待します。

先述のとおり,2025年は情報学教育,教育の情報化推進にあたって,重要な1年となります。

情報学教育研究会は,2022年度より3か年計画で電子投稿システムなどの研究基盤整備をおこなって参りました。2024年には,教育情報化推進部門に校務部会を設置,賛助会員制度を新設するなど,産業界と連携し,研究開発することができる体制を整備しました。

情報学教育研究会のバックボーンを最大限に活かしつつ,研究成果を社会に還元して参ります。情報学教育研究会への一層のご理解とご協力を賜りますよう,お願い申し上げます。

最後に,2025年がみなさまにとって飛躍の年になりますよう心より祈念いたしまして,新春のご挨拶といたします。

2025年 1月 1日

情報学教育研究会
代表 横山 成彦

横山 成彦

情報学教育研究会代表。修士(教育学)。大阪学院大学高等学校情報管理室室長・株式会社SFC。

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