2025年の情報学教育記念日に寄せて

情報学教育記念日に寄せて 研究会からのお知らせ

情報学教育研究会は,「情報学教育研究会」としてリスタートして,本日で16周年を迎えました。
情報学教育研究会では,毎年11月11日を「情報学教育記念日」として制定しています。

この記念日にあたり,情報学教育研究会 代表 横山成彦のメッセージを掲載いたします。

代表 メッセージ

情報学教育記念日を迎えるにあたり,情報学教育研究会を代表して,この一年をふり返り,また,これからの一年への思いを記します。

この一年,学校現場を取り巻く「情報」と「学び」の環境は,さらに大きく揺れ動きました。生成AIは,もはや一過性のものではなく,授業づくりや校務の場面において具体的な利用方法を検討する段階に入っています。文部科学省による生成AIガイドラインの改訂や,学校現場での利活用を検証するパイロット校における実践などを通じて,「使うかどうか」ではなく「どう安全に,教育的に意味のある形で使うか」が問われるようになりました。

一方で,GIGAスクール構想は第2期に入り,端末更新とネットワーク再整備が本格化しています。NEXT GIGAとも呼ばれるこのフェーズでは,1人1台端末の更新基金や教育DXロードマップが示され,単なる「端末配備」から「学びの基盤としての活用の質」が問われる段階になりました。多くの自治体で2025年度に端末更新が集中するという調査結果は,この一年がまさに転換点であることを物語っています。

加えて,次期学習指導要領の検討が始まり,「情報活用能力の抜本的向上」が大きな柱として掲げられました。中央教育審議会や特別部会の論点整理では,小学校における「情報」の新たな領域や,中学校での「情報・技術」を視野に入れた再編が検討事項として示されています。初等中等教育を通した一貫した情報教育の姿,つまり,私たちが長年,その必要性・重要性を訴えてきた,情報学教育が,本格的に国の議論の俎上に乗った一年であったと言えるでしょう。

しかし,前進だけがあったわけではありません。大学や自治体に加え,卒業アルバム事業者など,教育に関わる組織へのサイバー攻撃や情報漏えいのニュースが相次ぎました。子どもたちや保護者に関わる情報が,学校の外に広がるサプライチェーン全体で脅かされている現実は,「学校だけ守ればよい」という発想が通用しないことを,私たちに強く突きつけています。

学校現場では,こうした大きな流れと向き合いながら,日々の授業と生徒指導,保護者対応に追われる先生方がいます。生成AIへの対応や端末更新への準備,セキュリティ研修の受講が「仕事が増えた」と感じられても不思議ではありません。情報教育や教育の情報化は,本来,先生方の仕事をさらに重くするためのものではなく,子どもたちの学びを支え,先生方の専門性を支える基盤であるべきだと,あらためて感じています。

情報学教育研究会としてのこの一年をふり返ると,私たちもまた模索を続けてきました。学校現場のリアルな課題に即した教材づくりをはじめとした,教職員向けの「明日から役立つ」視点で,情報を守るための考え方について整理してきました。また,寄附決済サイト「コングラント」を通じた寄附の受付を開始し,情報学教育を支える基盤をみなさまとともに育てていくための,一歩を踏み出した年でもありました。

この間,強く感じているのは,「正解を一度決めれば終わり」という世界から,「変化に耐えうる考え方と仕組みを,みんなで更新し続ける」世界へと移行しているということです。生成AIも,GIGA端末も,新しい学習指導要領の議論も,一度整えば終わりではありません。むしろ,そこから先の運用と学び合いのプロセスこそが,教育の質を左右していきます。

これからの一年,情報学教育研究会は,次の3つを特に大切にして歩んでいきたいと考えています。第一に,研究と実践をつなぐことです。統計や制度の動きを追うだけでなく,「教室で何が起きているのか」という現場の声を起点に,エビデンスに基づく議論を続けていきます。第二に,小中高,そして大学・地域をつなぐことです。子どもたちの学びは学校段階で区切られるものではなく,連続した経験の積み重ねとして設計されるべきだと考えています。第三に,先生方一人ひとりの「安心して試行錯誤できる環境」を支えることです。完璧な答えではなく,「ここから始めてみよう」と言える小さな一歩を,ともに考えていきたいと思います。

情報学教育記念日は,派手なイベントの日というよりも,静かにこの一年をふり返り,「情報とともに学ぶ社会」で,私たちは何を大切にしていきたいのかを問い直す日だと感じています。子どもたちがデジタル技術に振り回されるのではなく,技術を活かし,自分と他者の尊厳を守りながら,豊かに学び,生きていける,そのための環境づくりに,私たちはこれからの一年も粘り強く関わっていきたいと思います。

本日,11月11日の情報学教育記念日にあたり,学校現場で日々奮闘されている先生方,支援に携わるみなさま,そしてともに情報学教育を考え続けてくださるすべての方々に,心からの敬意と感謝を申し上げます。これからの一年も,みなさまとともに,よりよい学びの姿を探究し続けて参ります。

2025年11月11日

情報学教育研究会
代表  横山 成彦

横山 成彦

情報学教育研究会代表。修士(教育学)。大阪学院大学高等学校情報管理室室長・株式会社SFC。

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