みなさん,こんにちは。
戦後80年の夏を迎えました。戦争を経験された方々が年々少なくなる中で,私自身も先月,身近な戦争経験者を見送りました。その折に,35年前(1990年)に書かれた戦争手記を読み返す機会を得ました。当時の視線や言葉づかいに触れることで,今の自分の位置から静かにページをたどる時間となりました。
今回の読み返しで印象に残ったのは「距離感」です。手記の筆者が見た景色と,現在の私が思い浮かべる景色のあいだには,どうしても隔たりがあります。無理に埋めようとせず,そのまま意識に置いたまま読み進めると,断片が静かにつながります。急がず,書かれた順序で,書かれた言葉のままたどっていくと,結論を急がない分だけ,余白に残る重みがはっきりとしてきます。
この夏は,そんな調子で,自分の手の届く範囲の記録を少しずつたどっています。方法はささやかですが,戦後80年の今,あわてず,騒がず,少しずつ。そんな読み返しの手触りの記録です。