2023年 年頭所感

2023年 年頭所感 研究会からのお知らせ

2023年の年頭にあたり,情報学教育研究会 代表の横山よりご挨拶申し上げます。

情報学教育の「ビル」を建てはじめましょう

2023年の年頭に当たり,謹んで新年のご挨拶を申し上げます。

2022年を振り返りますと,社会は2020年から続く新型コロナウイルス感染症,紛争,半導体不足,物価の高騰,急激な円安など,あらゆる事柄が「従来どおり」とはいかない不安定な一年でした。

情報学教育の分野では,全国の高等学校において新しい学習指導要領が年次進行で開始され,必履修科目である「情報I」での学びがはじまりました。初等中等教育段階のうち,小学校および中学校はすでに新しい学習指導要領での完全実施がなされているため,今回の高等学校の年次進行での開始を以て,プログラミング的思考を育む教育をはじめとする情報教育の縦断が実現されることとなりました。

本会・名誉代表の松原伸一先生は,よく情報学教育のコア・フレームワークを「高層ビル」に見立てていらっしゃいました。情報学教育の立体的に視覚化したものを「高層ビル」とすると,情報教育の初等中等教育の縦断ができた段階は,「高層ビル」を建てるための基礎工事が終わったといったところでしょうか。

次に情報学教育研究会が取り組むべきは躯体工事です。この躯体工事においては,初等中等教育段階だけではなく,高層階には高等教育および生涯教育を,また地階には就学前教育のフロアを設ける必要があります。併せて,2030年代の学習指導要領改訂を見据え,内装のデザインを構想しなければなりません。

教育の情報化分野においては,GIGAスクール構想により学校の情報化が急激に進みました。ひとり1台の教育用情報端末の整備を実現している学校も増えています。その一方で,未整備の学校との格差が懸念されるところです。

GIGAスクール構想により導入されたシステムの最適なリプレース間隔はシステムにもよりますが,一般的に5年と言われています。2030年代の学習指導要領がはじまるころには,2回目のリプレースを迎えなければなりませんが,学校にとっては新たにシステムの維持・更新費がかかってくるため,保守契約が組めなくなったシステムを「まだ使えるから」と言って,情報セキュリティを蔑ろにしてそのまま使い続ける学校が出てくることも懸念されます。

そうした面から,情報学教育研究会は,教育の情報化を推進するにあたり,必要なシステム・機能の取捨選択をした上で,すべての学校に低コストで導入・維持・更新が可能で,児童生徒・教職員が使い勝手のよいと感じるシステムの実現に向けた構想を担わなければならないと考えています。ビル建設に例えるなら,設備工事に当たる部分ですが,各校の教育の情報化の底上げを図る点においても,2030年代の学校教育に大きな効果をもたらすものと確信しています。また,2020年代の残り7年間を教職員の誰もが学校のあらゆる場面でICTを活用することができるよう,ICT活用を含めた情報学教育の知識・技能の向上と理解を深めることのできる機会を設けなければならないと考えています。

情報学教育研究会は,これらの実現に向けて,昨年より電子投稿システムの構築をはじめとする研究基盤の整備に着手してきました。

そして今年はいよいよ情報学教育のビルを建てはじめます。情報学教育研究会が20年以上にわたり培ってきた理論と実践による成果とこれからも絶え間なく発表していく研究を礎に,一貫した体系的に構築された情報学教育,教育の情報化を実現できるように邁進して参ります。

情報学教育研究会への一層のご理解とご協力を賜りますよう,お願い申し上げます。

最後に,2023年がみなさまにとって飛躍の年になりますよう心より祈念いたしまして,新春のご挨拶といたします。

代表 横山成彦

2023年 1月10日

情報学教育研究会
代表 横山 成彦