2023年の情報学教育記念日に寄せて

研究会からのお知らせ

情報学教育研究会は,「情報学教育研究会」としてリスタートして,本日で14周年を迎えました。

この記念日にあたり,情報学教育研究会 代表 横山成彦のメッセージを掲載いたします。

代表 メッセージ

情報学教育研究会には,記念日を3つ設定しています。

3月16日

2002年3月16日,情報学教育研究会の前身となる情報科教育法研究会を創設しました。

当時は高等学校で「情報科」がはじまる前年です。どのように教科「情報」を指導していくか,喫緊の課題となっていました。その課題の解決のため,研究を進めていくために情報科教育法研究会を創設したのが情報学教育研究会の原点です。

研究の成果はその後,『教科「情報」の実習事例』(開隆堂出版)をはじめとする著書などにまとめ,広く公開しました。

7月29日

2010年7月29日,情報学教育研究会と姉妹団体であった教育情報化推進研究会を創立しました。

当時の一般的な普通教室といえば,テレビが設置されていることがあるくらいで,情報機器が常設されていることは皆無でしたが,先進校においては特定の教室に電子黒板が導入されはじめた時期でした。

同年,文部科学省では学校教育の情報化に関する懇談会が設置され,学校教育の情報化に総合的な推進方策の議論がはじまっていました。そうした状況からも,今後,電子黒板の配備にとどまらず,教室環境は情報化により一変することが推察されました。

そうした環境の変化に対応し,教育現場で教壇に立たれる先生方が,「黒板とチョーク」と同様に情報機器を使って巧みに授業展開していただけるよう,教育の情報化による新しい教育方法論の研究を行うために教育情報化推進研究会を創設しました。

そして今日の普通教室においては,電子黒板が1教室に1台,Wi-Fi環境も整備され,児童生徒は1人1台のタブレット型PCを持っている…そうした光景が一般的になってきました。教科書においても随所にQRコードが載せてあり,タブレット型PCで読み取ると,その内容に関連したWebコンテンツを見ることができるというような,この10年で学習環境は劇的に変化しました。

この変化は,情報学教育研究会や教育情報化推進研究会にも影響をもたらします。

情報学教育研究会は教育内容論に特化した研究会として,教育情報化推進研究会は教育方法論に特化した研究会として,それぞれ活動を進めてきました。しかし,タブレット型PCが教科書やノート,筆記具と同様に学習ツールとして一般化したことから,より一層の緊密な連携が不可欠となりました。

こうしたことから,2020年,教育情報化推進研究会は発展的に情報学教育研究会に統合し,新たなフェーズへと移行することになりました。

11月11日

2009年11月11日,情報科教育法研究会をリコンセプトして情報学教育研究会がスタートしました。

情報科教育法研究会はその名のとおり「情報科」教育に特化した研究会でした。情報科といえば,誕生から今日まで,高等学校のみに設置されています。

しかし,社会の情報化の進展により,小中学生においても携帯電話やスマートフォンを所持することが多くなるにつれ,「学校裏サイト」をはじめとするさまざまな問題が生じてきました。しかし,児童生徒が情報教育を学ぶ機会は中学校段階の技術分野において一部を取り扱うのみで,小学校段階においては皆無に近い状況でした。

そこで,初等中等教育一貫して情報に関する教育を解こす必要が生じました。それを文理融合のもと,体系的に構築・展開していくために,情報科教育法研究会で培った研究成果を継承し,情報学教育研究会としてリスタートしました。

その後,情報学教育研究会は,学習者の対象を初等中等教育段階に限らず,就学前教育から生涯学習までを範疇とし,さらに先述の教育情報化推進研究会と統合(2020年)し,あらゆる側面から高度に情報学教育に関する研究ができるよう,次代を見据えた体制の整備をおこないました。


これらから,3月16日は原点を振り返る創設記念日として,7月29日は学校教育の情報化,教育方法論について考える教育情報化推進記念日として,11月11日は情報学教育,教育内容論について考える情報学教育記念日として,それぞれ大切にしています。

本日,11月11日を迎えました。

昨今の種々の新しい教育の取組状況を鑑み,いまこそ情報学教育の真価が試されているときであると実感しています。

歴代の多くの方々に育てていただいた情報学教育の研究の成果を社会に還元すべく,あらゆる形で一層の活動していきたいと考えています。

引き続き,みなさまのご支援,ご協力のほど,よろしくお願いいたします。

2023年11月11日

情報学教育研究会
代表  横山 成彦